“階段を一段ずつしか降りられなくなった”のは、“恐怖”と“バランス”の問題
2025.03.21

“階段を一段ずつしか降りられなくなった”のはなぜ?
〜“恐怖”と“バランス”の問題〜
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◆「昔はスタスタ降りていたのに…」
・右足だけで1段ずつ降りる
・手すりを強く握って慎重に降りる
・階段の前で立ち止まるようになった
──そんな変化が見られたとき、
「足が弱ってきたのかな」と思われることが多いかもしれません。
ですが、それだけではありません。
そこには“バランス感覚”の変化や“恐怖心”が大きく関係しています。
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◆階段の下りは“体の連携”が最も必要な動作
階段を降りるには、
・視覚で段差を認識
・足元に体重を移す判断
・踏み出す脚と体幹のバランス制御
・不安定な姿勢での“降りる勇気”
──これらすべてを同時に行う高度な全身協調が求められます。
つまり一段ずつしか降りられない=全身の「自信の低下」のサインなのです。
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◆“落ちるかも”という恐怖は本能的なブレーキ
人間の脳は、「転落の可能性」を感じると、
・身体の動きを“慎重モード”に切り替え
・左右交互のステップを“封じる”ことで安全を確保しようとします。
安全を守る行動ではあるものの、
それが慢性化すると歩行や動作の幅が狭くなるリスクにもつながります。
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◆バランス感覚は“足”よりも“体幹と脳”
・足は動くけれど、怖くて踏み出せない
・視線が下ばかりで、上体が不安定になっている
・空間の奥行きがつかみにくくなっている
こうした場合は、体幹・視覚情報・判断力の変化を考えるべきです。
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◆今日からできる声かけ・支援のヒント
・「1段ずつでいいよ」ではなく「ゆっくり降りてね」とプレッシャーを減らす
・“下る動作”の前に“体を整える時間”をとる
・階段の段差に目立つ色や線を加えて認識を補助する
・“昇りと降り”で疲労や恐怖の差を記録しておく
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◆まとめ
・“一段ずつしか降りられない”のは“筋力”だけの問題ではない
・そこには“バランス感覚”の揺らぎと“転倒への恐怖”が隠れている
・身体と心を同時に支えることで、“また降りられる日”が近づく
階段の前で止まる姿に、“本当の理由”がある。
そのブレーキの意味を、見逃さないでください。